コラム

土地活用の実務ノート【第2回】固定資産税はなぜ更地で跳ね上がるのか──住宅用地特例と「持ち続けるコスト」の計算

「家を壊すと、固定資産税が6倍になる」

土地活用の話をしていると、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。

結論から申し上げると、この説明は半分は正しく、半分は正確ではありません。

そして、その「半分」を知らないまま解体の判断を先送りしている方は、少なくないのではないでしょうか。

この記事でわかること

・住宅用地特例が外れると、税額は実際に何倍になるのか(実額の試算つき) ・解体以外に、特例が外れてしまうもう一つの入口 ・2026年度と2027年度で、土地の固定資産税に何が起きるのか


【「6倍になる」は、どこまで本当か】

前回、土地の棚卸し5項目(※公開後に第1回のURLへ差し替え)のなかで、更地にすると固定資産税の特例が外れる、という話に触れました。

今回はそこを、実際の計算まで踏み込んで整理します。

固定資産税は、**課税標準額 × 税率(標準税率1.4%)**で計算されます。

大事なのは、「評価額」ではなく「課税標準額」に税率をかける点です。

住宅が建っている土地は、この課税標準額そのものが法律で圧縮されています。

これが住宅用地の特例(地方税法第349条の3の2)です。


【特例の中身──「200㎡」で線が引かれている】

住宅用地の特例は、面積で2段階に分かれています。

小規模住宅用地(住宅1戸あたり200㎡以下の部分)……固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税は3分の1

一般住宅用地(200㎡を超える部分)……固定資産税の課税標準が3分の1、都市計画税は3分の2

つまり「6分の1」が適用されるのは、あくまで200㎡までの部分です。

300㎡の土地なら、200㎡分が6分の1、残り100㎡分が3分の1、という按分になります。

広い土地ほど「6倍」から遠ざかる、という点は押さえておきたいところです。

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なお判断の基準は、建物の登記の有無ではなく、実際に人が住める住宅として存在しているかどうかです。


【実際に計算してみる──120㎡・評価額1,800万円のケース】

市街化区域にある120㎡、固定資産税評価額1,800万円の土地で試算してみます(都市計画税の税率は上限の0.3%と仮定)。

住宅が建っている場合

・固定資産税:1,800万円 × 1/6 = 300万円 → 300万円 × 1.4% = 4.2万円 ・都市計画税:1,800万円 × 1/3 = 600万円 → 600万円 × 0.3% = 1.8万円 ・合計:年6.0万円

更地にした場合

ここで効いてくるのが負担調整措置です。

住宅用地以外の宅地(商業地等・非住宅用地)は、課税標準額が評価額の70%を上限とするよう抑えられています。

・固定資産税:1,800万円 × 70% = 1,260万円 → 1,260万円 × 1.4% = 17.64万円 ・都市計画税:1,260万円 × 0.3% = 3.78万円 ・合計:年21.42万円

差は年15.4万円ほど。

倍率にすると、固定資産税だけなら約4.2倍、都市計画税を含めた総額では約3.57倍です。

「6倍」ではありませんが、決して小さな差ではありません。

そしてこの差は、土地を持ち続けるかぎり毎年発生します


【金融知識:保有コストを「利回り」に換算してみる】

ここで、投資家がよく使う考え方を土地に当てはめてみます。

先ほどの更地は、年21.42万円の税負担がありました。

この土地の実勢価格を仮に2,200万円とすると、

21.42万円 ÷ 2,200万円 ≒ 年0.97%

つまりこの土地は、年およそマイナス1%の利回りで運用されている資産と言い換えられます。

草刈りや管理の実費を年5万円加えれば、マイナス1.2%程度でしょうか。

投資家がファンドを見るときに、表面利回りから運営費・税金を引いて実質利回りを求めるのと、まったく同じ計算です。

この見方に立つと、土地活用の意味が少し変わって見えてきます。

活用とは「0%の資産をプラスに変えること」ではなく、**「マイナスの資産をプラスに転じること」**です。

出発点がマイナスである以上、仮に利回り3%の事業でも、実質的な改善幅は4%を超えます。

売却か活用かで迷っている方は、第10回「土地を『売る』べきか『活かす』べきか」とあわせて、この「マイナスの大きさ」も判断材料に加えてみてはいかがでしょうか。


【解体していなくても特例が外れる場合がある】

見落とされやすいのが、もう一つの入口です。

2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法により、**「管理不全空家等」**という区分が新設されました。

特定空家等……倒壊等の危険、著しく衛生上有害、著しく景観を損なうなどの状態にある空き家 ・管理不全空家等……そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態の空き家

このいずれかに指定され、市区町村から勧告を受けると、その土地は住宅用地特例の対象から除外されます。

建物が建ったままでも、税額は更地並みに上がるということです。

改正前は特定空家等の勧告のみが対象でした。より手前の段階から特例解除がありうる制度に変わった、と捉えておくとよさそうです。

全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高となりました(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」2023年10月1日現在)。

このうち、賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた**「その他の空き家」は385万6千戸**。

行政が主な対策対象としているのは、この区分です。

空き家を抱えたまま活用を検討している方は、第5回「空き家問題と障がい者グループホーム活用」も参考になるかもしれません。


【2026年度と2027年度に起きること】

制度の時間軸も押さえておきましょう。

固定資産税の評価額は、3年に一度見直されます(評価替え)。

直近の評価替えは2024年度(令和6年度)で、2025・2026年度は原則として据え置きです。

**次の評価替えは2027年度(令和9年度)**にあたります。

もう一つ、先ほどの負担調整措置は、2024年度から2026年度までの3年間として延長されたものです。

2027年度以降の扱いは、今後の税制改正で決まります。

つまり2027年度は、評価替えと負担調整措置の期限が重なる年です。

税負担を試算するなら、2027年度の通知書までを見越しておくと安全ではないでしょうか。


【納税通知書で確認する5項目】

「持ち続けるコスト」の実額は、毎年4〜6月頃に届く納税通知書(課税明細書)で確認できます。 <!– 写真差し込み位置:固定資産税の納税通知書・課税明細書の写真(検索キーワード:固定資産税 納税通知書 / 課税明細書) –>

#見る欄確認すること見方のポイント
1価格(評価額)土地の固定資産税評価額実勢価格のおおむね7割が目安
2課税標準額(固定)評価額との比率評価額の1/6前後なら特例が効いている
3課税標準額(都計)評価額との比率同じく1/3前後かを確認
4現況地目・地積「宅地」か、面積は登記どおりか200㎡を超える場合は按分になる
5摘要・備考欄「小規模住宅用地」等の記載記載がなければ特例が外れている可能性

②が評価額の70%前後になっていれば、その土地はすでに非住宅用地として課税されています。

心当たりがないのに70%になっている場合は、市区町村の資産税課に照会してみる価値がありそうです。


【よくある質問】

Q1. 駐車場にすれば特例は使えますか?

いいえ。住宅用地特例は「住宅の敷地」に対する特例のため、青空駐車場や資材置場は対象外で、更地と同じ扱いになります。ただし賃貸住宅の入居者専用駐車場のように、住宅の敷地と一体で使われていると認められるケースはあります。判断は自治体によって異なるため、事前の確認をおすすめします。

Q2. 年の途中で解体すると、その年から税額は上がりますか?

固定資産税は毎年1月1日時点の状況で課税されます。2026年5月に解体した場合、2026年度は特例が適用されたままで、上がるのは2027年度分からです。解体時期を決める際は、この基準日を意識しておくと資金繰りが立てやすくなります。

Q3. 相続した実家を売る場合、税金の優遇はありますか?

被相続人の居住用財産(空き家)を売却した際の3,000万円特別控除など、譲渡所得側の特例があります。ただし耐震基準への適合や取壊し、譲渡期限といった要件が細かく、事前確認が欠かせません。手放す方向も検討されている方は、第8回「相続土地国庫帰属制度とは?」もあわせてご覧ください。


【まとめ:まず、今年の納税通知書を出してきてください】

今回の内容を、実際に動ける形にまとめます。

今週できること

・今年届いた納税通知書(課税明細書)を探し出す ・土地の「価格」と「課税標準額」を並べて書き出す ・その比率が1/6前後か、70%前後かを確かめる

そのうえで計算すること

・年間の固定資産税+都市計画税の合計額 ・それを土地の実勢価格で割った「マイナスの利回り」

この2つの数字が出れば、活用提案を受けたときに「この事業は、いまのマイナスを埋めて、さらにどれだけ生むのか」という比較ができます。

土台がないまま提案を聞くと、提示された利回りの数字だけが独り歩きしてしまいがちです。

納税通知書は、たいてい引き出しの奥に眠っています。

まずはそこから始めてみてはいかがでしょうか。


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参考・出典

・地方税法第349条の3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)、第350条(標準税率)、第702条の4(都市計画税の制限税率) ・空家等対策の推進に関する特別措置法(2023年12月13日改正法施行、国土交通省) ・総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(2024年公表、2023年10月1日現在) ・土地に係る固定資産税の負担調整措置(令和6年度税制改正により2026年度まで延長)