土地活用の実務ノート【第3回】登記簿・公図・測量図の読み方──「うちの土地」の輪郭を正しく知る
「うちの土地は、だいたい120坪くらいです」
土地活用のご相談で、最初にうかがう面積は、たいていこの「だいたい」から始まります。
その120坪という数字が、どの書類のどの欄から来たものなのか。
そこまで確かめている方は、実はそれほど多くないのではないでしょうか。
この記事でわかること
・登記事項証明書・公図・地積測量図が、それぞれ何に答えてくれる書類なのか ・3点をいくらで、どこから取り寄せられるのか(2026年4月改定の料金つき) ・境界が決まっていない土地が、事業計画のどこで不利になるのか
【面積の数字には、少なくとも3つの出どころがある】
第1回の「土地の棚卸し」(※公開後に第1回のURLへ差し替え)で、まず自分の土地の条件を確定させましょう、というお話をしました。
今回はその中身、つまり「どの書類を、どう読むか」に入ります。
土地の面積には、少なくとも3つの出どころがあります。
・登記簿に記録された登記地積 ・固定資産税の課税明細に載っている課税地積 ・実際に測ってみた実測面積
この3つは、一致することもあれば、しないこともあります。
そして活用事業の計画は、原則として実測面積の上に立ちます。
登記簿の数字だけで描かれた配置図は、着工前に描き直しになるかもしれません。 <!– 写真差し込み位置:法務局の証明書発行窓口・交付請求機の写真(検索キーワード:法務局 窓口 / 登記事項証明書 交付請求機) –>
【3つの書類は、それぞれ別の質問に答えている】
登記簿・公図・地積測量図は、しばしばひとまとめに語られますが、答えている質問が違います。
| 書類 | 答える質問 | 主な記載 | 手数料(書面請求) | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 登記事項証明書(登記簿) | 誰の、どういう土地か | 所在・地番・地目・地積、所有者、抵当権などの権利 | 600円/通 | 地積は実測と異なる場合がある |
| 公図(地図・地図に準ずる図面) | 形と、隣との並び方 | 地番の配置、土地の区画の形状 | 500円/件 | 精度は図面によって大きく異なる |
| 地積測量図 | 面積が、どう測られたか | 求積の根拠、境界標、辺長、座標 | 500円/件 | そもそも存在しない土地が多い |
※手数料は令和7年4月1日改定後の額(法務省「登記手数料について」)。

3点セットで取り寄せるのは、この3つの質問に一度に答えを出すためです。
【登記事項証明書──地番と地目、そして権利欄を見る】
登記事項証明書は、住所(住居表示)ではなく地番で特定します。
郵便物が届く住所と地番は別の体系なので、まずここでつまずく方が少なくありません。
地番は、固定資産税の納税通知書(課税明細書)や、法務局のブルーマップで確認できます。
見るべき欄は、次の3つです。
・表題部……所在・地番・地目・地積。地目が「田」「畑」のままなら、建築の前に農地転用の手続きが必要になります ・権利部(甲区)……所有者。相続が済んでいない土地は、ここが亡くなった方の名義のままです ・権利部(乙区)……抵当権など。完済したのに抹消していない古い抵当権が残っているケースもあります
甲区・乙区に想定外の記載があると、事業者との契約や融資の段階で必ず止まります。
早い段階で気づけば、司法書士への相談で片づくことがほとんどです。
【公図──形は分かる。ただし精度は一律ではない】
公図と呼ばれている図面は、実は2種類あります。
・法第14条地図……地籍調査などにもとづく、精度の高い地図。現地復元性がある ・地図に準ずる図面……明治期の地租改正時の図(いわゆる公図)を引き継いだもの。形の目安にはなるが、寸法の精度は期待できない
どちらが備え付けられているかは、地域によって大きく異なります。
全国の地籍調査の進捗率は53%、優先実施地域に限っても**81%**にとどまります(国土交通省「全国の地籍調査実施状況」令和7年度末時点)。
とくに都市部(人口集中地区)は**30%**と低く、市街地の土地ほど「地図に準ずる図面」しかない可能性が高いことになります。 <!– 写真差し込み位置:公図(地図に準ずる図面)の紙面クローズアップ(検索キーワード:公図 法務局 / 地図に準ずる図面) –>
なお法務省は、登記所備付地図データをG空間情報センターで無償公開しています(2023年1月開始、直近の更新は2026年4月15日/2026年2月時点データ)。
手元で土地の並びを俯瞰したいだけなら、まずここを見てみるのも一つの方法かもしれません。
公図で道路づけと隣地の並びを押さえたら、その土地に何が建てられるかは第11回「用途地域とは?」が手がかりになります。
【地積測量図──「いつ作られたか」で信頼度が変わる】
3点のうち、もっとも実務に効くのが地積測量図です。
ただし、すべての土地にあるわけではありません。
分筆や地積更正の登記があったときに作られる図面なので、先祖代々そのままの土地には存在しないことが珍しくありません。
そして存在する場合も、作成年代によって信頼度が変わります。
| 作成時期 | 特徴 | 現地復元性 |
|---|---|---|
| 昭和35年4月〜41年3月 | 単位が「間」「坪」。境界標の記載義務なし | 低い |
| 昭和41年4月〜52年9月 | メートル法に移行。面積の表示が中心 | 低い |
| 昭和52年10月〜平成5年9月 | 境界標・引照点の表記が規定される(義務ではない) | 中程度 |
| 平成5年10月〜平成17年3月 | 境界標の表記が義務化。座標計算が普及 | 高い |
| 平成17年3月7日以降 | 公共座標の利用と全筆求積が義務化 | 非常に高い |
(出典:三井住友トラスト不動産「地積測量図の変遷」ほか、不動産登記規則の改正経緯にもとづく)

平成17年より前の図面は、参考資料にはなっても、そのまま事業計画の前提には置きにくい。
まずは手元の図面の作成年月日を確認する——ここが出発点になりそうです。
【金融知識:境界が決まっていない土地は、担保として値引きされる】
ここで、投資家や金融機関の側から同じ土地を見てみます。
金融機関が土地を担保に取るとき、見ているのは「いくらで売れるか」ではなく、**「万一のときにいくらで確実に換価できるか」**です。
境界が確定していない土地は、この換価の場面で二重に不利になります。
・隣地との立会いが済んでいないため、売却時に境界確定を求められ、その分だけ売却までの時間が延びる ・越境や面積の食い違いが後から出れば、買主との価格交渉になる
結果として、担保評価では保守的な掛け目が適用されやすくなります。
土地の価値そのものが下がるわけではありません。
確実性が低い分だけ、割り引かれるという構造です。
これは投資家がファンドを評価するときの発想とまったく同じで、期待収益が同じなら、不確実性が高いほど要求利回りは高くなります。
境界確定測量の費用は、民民のみで概ね30〜50万円、道路など官民の査定を含むと60〜80万円、期間は1か月半〜3か月が目安とされます。
金額だけを見れば決して小さくありませんが、融資条件の改善と、事業着手の遅れの回避という2つの効果で考えると、見え方が変わってくるのではないでしょうか。
売却と活用を並べて検討されている方は、第10回「土地を『売る』べきか『活かす』べきか」の判断軸にも、この「確実性のコスト」を加えてみてください。
【2026年4月から、登記簿の住所は放置できなくなりました】
登記簿を取り寄せたら、あわせて確認したいことがあります。
甲区の所有者欄の住所が、いまの住所かどうかです。
2026年(令和8年)4月1日から、住所等変更登記の申請が義務化されました。
・住所や氏名が変わった日から2年以内に申請 ・正当な理由なく怠ると5万円以下の過料 ・施行日より前の変更も対象で、期限は2028年(令和10年)3月31日まで
過料は登記官の催告後に正当な理由なく応じなかった場合に限られるとされていますが、期限があることに変わりはありません。
負担軽減策として、生年月日などを一度申し出ておけば法務局が職権で変更登記をする**「スマート変更登記」**(検索用情報の申出)も同日から始まっています。
相続登記の義務化(2024年4月)と合わせ、登記簿を実態に合わせておくことが前提になった、と言えそうです。
【3点を取り寄せる──手数料と手順】

方法は大きく3つあります。
① 法務局の窓口・郵送(書面請求) 登記事項証明書600円/通、地図・図面の証明書500円/件。全国どの法務局でも、他県の土地の証明書を請求できます。
② オンライン請求(登記・供託オンライン申請システム) 登記事項証明書は窓口交付490円/送付520円、地図・図面は窓口440円/送付470円。証明書としての効力があり、いちばん安く済みます。
③ 登記情報提供サービス 2026年4月1日の改定で、不動産の全部事項330円、地図・図面360円。PDFで即時に閲覧できますが、証明書としての効力はありません。
内容を確かめたいだけなら③、事業者や金融機関に提出するなら①か②、という使い分けです。
【よくある質問】
Q1. 地積測量図が法務局になかった場合、どうすればよいですか?
慌てなくて大丈夫です。地積測量図がない土地は珍しくありません。まず現地の境界標の有無を確認し、活用を具体的に進める段階で土地家屋調査士に確定測量を依頼する、という順序で問題ないでしょう。売却や融資の予定があるなら、早めの着手がスケジュールに余裕を生みます。
Q2. 登記簿の面積と実測面積が違いました。登記を直すべきでしょうか?
必ずしも直さなければならないわけではありません。ただし実測が登記より広い場合(いわゆる縄伸び)、地積更正登記をすると固定資産税が増える可能性があり、逆に狭い場合は減る可能性があります。売却や分筆の予定と合わせて、土地家屋調査士にご相談ください。
Q3. 公図を見たら、うちの土地が道路に接していないように見えます。
公図(地図に準ずる図面)は精度が保証されておらず、図面上の見え方と現況が食い違うことがあります。ただし、実際に接道義務を満たしていない土地も存在します。建てられるかどうかを左右する論点のため、次回の第4回で詳しく取り上げます。
【まとめ:土地の輪郭を確かめる7項目チェックリスト】
今回の内容を、そのまま手を動かせる形にまとめます。
取り寄せる(今週)
□ ①納税通知書か法務局のブルーマップで地番を確認した □ ②登記事項証明書を取得した(オンライン請求なら490円) □ ③公図を取得した(同440円) □ ④地積測量図の有無を確認した
読む(取り寄せたら)
□ ⑤表題部の地目を確認した(「田」「畑」なら農地転用が必要) □ ⑥甲区の所有者と住所が現状と一致している(2026年4月から住所変更登記は義務) □ ⑦地積測量図があるなら、作成年月日を確認した(平成17年3月以降なら信頼度が高い)
7つすべてに印がつけば、事業者から提案を受けたときに、その計画がどの数字を前提にしているかを自分で確かめられます。
逆に言えば、この7項目が空欄のまま聞く提案は、根拠のない面積の上に描かれた絵かもしれません。
土地の輪郭を確かめる費用は、3点合わせても1,500円ほど。
数千万円の判断の入口としては、ずいぶん安い部類ではないでしょうか。 <!– 写真差し込み位置:コンクリート杭・金属プレートなどの境界標の写真(検索キーワード:境界標 杭 / 境界標 金属プレート) –>
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参考・出典
・法務省「登記手数料について」(令和7年4月1日改定。登記事項証明書 書面600円/オンライン送付520円/オンライン窓口交付490円、地図等証明書 書面500円/送付470円/窓口交付440円) ・法務省「登記情報提供サービスの利用料金等一覧」(令和8年4月1日改定。不動産全部事項330円、地図・図面360円) ・国土交通省 地籍調査Webサイト「全国の地籍調査実施状況」(令和7年度末時点。全国53%、優先実施地域81%、DIDは登記所備付地図作成作業を合算して30%) ・法務省「地図データのG空間情報センターを介した一般公開について」(2023年1月公開開始、2026年4月15日更新/2026年2月時点データ) ・法務省「住所等変更登記の義務化について」(令和8年4月1日施行、2年以内、5万円以下の過料、施行前の変更は令和10年3月31日まで) ・不動産登記法第14条、不動産登記規則(地積測量図の作成基準の改正経緯) ・三井住友トラスト不動産「地積測量図の変遷」(作成年代別の精度) ・住友不動産ステップ「確定測量の費用相場」(民民30〜50万円、官民査定含め60〜80万円、期間1か月半〜3か月)
※本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な情報提供です。手数料や制度の運用は改定される場合があり、土地の状況によって必要な手続きも異なります。登記・測量・境界に関する個別の判断は、司法書士・土地家屋調査士等の専門家にご確認ください。